昨年初めて発見された「芦生の森の巨大すぎ群」を、小森さんが年末に見に出かけ
素晴らしい写真を撮ってこられました。 200m四方ほどの所に巨大な杉が群生しています。いずれも 伏条台杉と呼ばれる形態で、高さ数メートルの所まで巨大な幹が盛り上がり、 ここより上は細い枝がまっすぐに伸びるという形になっています。実際には 最初と最下段の写真に見るように、太い幹の中央部分が腐食して 幹が分離したものが多いが、分離前の大きさで考えると、 文句なしの日本一の幹周になるのではないでしょうか。その大きさは、 人物と比較してもらえばわかります。 芦生の森は、京都府の北東部で福井、滋賀県と境を接する北桑田郡美山町にあり、 京都大学に演習林として貸し付けられてきました。ここには、 人手の入ったことの無い原生林が2000ha以上にわたって拡がっている植物の宝庫です。 ここに揚水発電所を作る計画があり反対運動が拡がっています(「芦生の森から」 かもがわ出版、1996年)。アクセスは車以外はなかなか難しく、周山から日に数本 バスが出ていると思います。車では,京都から国道162号線を安掛で府道38号線に 乗り換えて北東に進みます。あるいは、鞍馬・貴船から花背峠を越えて直進します。 巨大杉の群生している場所を見つけてたどり着くのは大変なようです。以下の 小森さんの手記がそれを物語っています。小森さん、ご苦労様でした。愛用の アカベコとともに下段に紹介させていただきました。 |
**小森さんの「あかべこ日記洛北編」より抜粋** 「前もって仕入れていた情報はというと、「赤い吊り橋と材木工場の横の林道、 赤い岩とリボンを結んだ杉」だけなのだ。実に大ざっぱといえば大ざっぱだ。...。 少し迷いながらも何とか赤い吊り橋を発見した。...。 材木工場のお兄さんに道を尋ねるとすぐ横の林道を行けば良いとのこと。 いざ行かんと踏み出したのはほんの束の間、切り落とした灌木が道いっぱいに広がり 思うように前に進めない。濡れた生木や苔に足を滑らせたり、細かい枝に挟まって 尻餅をついたり、太い木っ端に乗ったとたんゴロンと転がって もんどり打ってすっころぶ。4,500mほど進むのに小一時間はかかってしまった。 やがて、道の左手の岩に赤いペイントのマーキングがあり、 右手の細い杉の枝に赤いリボンが結んであるのが見えた。 どうやら其処が巨大杉のある尾根への登り口らしい。...。 100mほど入り込んだところで道らしきものはなくなり、 所々に結びつけてある赤いリボンと赤いペイントを目印に進むことを余儀なくされる。 しかも斜度45度近い急坂が遙か上方に続いており、頂上など臨むべくもない。 更に登ること小一時間、...。そうこうしているうちになだらかな所に出た。 そして前方に巨大な杉を発見したのだ。...。早速ビデオに収めようと カメラを構えて奥の方にレンズを向け周囲の環境を入れた時、 見開いていた目が瞬きを忘れてしまった。何と木立の黒い影だと思っていたのが 一本の巨大な杉だったのだ。「ウグェエアアァ!?」と声にならない叫び声をあげて その黒い影に駆け寄った。それは何本もの杉の集まりと思えたのが 実は根元から枝分かれした一本の巨大な杉だったのだ。...。 周囲およそ20mはあろうか。...。更に周囲に目を遣ると、 あるわあるわ右にも左にも奥にも下にも急な斜面に踏ん張るようにねじ曲がった 捩れた巨大な枝を振りかざした更に更に巨大な杉達が、 ほんのちょっとの山の斜面に巨大な群を形成しているのだ。...。 本当におよそ200m四方の山の斜面にだけ何千年もの間、巨大な歪な姿の杉の群は 存在してきたのだ。その姿は...それこそ巨大な盆栽の如く歪に捩れ曲がり 膨れひねくれて仕立て上がっている。天然の盆栽、天然伏条台杉なのである。」 |